LANI KAI

 西暦2000年7月20日。祝日「海の日」のこの日も熊本は暑かった。もっとも私の暮らしている会社の寮には、M菱電機製のエアコンが完備されているおかげで快適に暮らせることができる。

 いつもより遅めの朝食を済ませた私は、窓の外に目をやった。凶器的な日射しと沸き上がる入道雲が、午前10時というのに30℃を越そうかという空気感を伝えていた。あまりにも天気が良いので、私は布団を干そうと思い立った。まず手すりを拭こうと雑巾を用意して窓を開けた瞬間、この世のものとは思えない熱風が私を襲った。一瞬たじろぎ、布団を干すことをあきらめかけた私だったが、初志貫徹し、布団を干すことに成功した。ちなみに梅雨の時期など布団を干せない日が続く場合には、「除菌もできるファブリーズ」をこれでもか! とふりかけることで満足している。

 昼過ぎ、ジーンズにポロシャツという出勤時とまったく変わらない服装で、私はショッピングに出かけることにした。歩いていける距離にもスーパーがあるのだが、今日の目的地には車でいくのがベストだ。若かりし頃は無理をしてでも自転車を多用していたものだが、足腰の衰えが隠せなくなった昨今、鍛えることよりも保護することで余生を過ごそうと考えている。

 駐車場まで徒歩5分。30℃を軽く越える中、このわずかな距離で私の体力は消耗したようだ。ここで「ホイミ」と唱えれば楽になれるのだろうか・・・と現実と妄想が錯綜する程だった。そんな私の脇を、今日から夏休みに入った小学生が元気に駆けていく。なんなんだお前たちのその体力は。さっさと宿題を済ませちまえ! とやっかみ半分になりながらも車に辿り着いた。車のドアを開けるのにも油断は大敵だ。ボンネットで焼きそばが作れる車内は、サウナ状態となっている。えいやっ、とドアをフルオープンにし、息を止めてクーラーをかけるところまで任務遂行すれば一旦車外で待機。シートやハンドルはまだ熱いが、乗り込める状態になったところで出発進行。

 目的地までは車で10分。阿蘇方面に3分走ったのち、進路を南に変更して7分走る。着いたところはBigWay東バイパス店。スーパーニコニコドーを擁する「LaLaLaグループ」の大型ディスカウントストアとして、地域住民に親しまれているアミューズメントパークだ。熊本の店はどこも駐車場が広い。このBigWayも野球場ほどもある駐車場を確保している。歩きたくないのでなるべく店に近い場所に車を停め、店内へと侵入した。

 店内は、夏休みということもありファミリーの姿が目立つ。暑さも手伝って休憩コーナーでジュースを飲んでいる客が多い。私はこの店にくるとまず入り口近くにあるゲームセンターに吸い込まれてしまう。この日も気がついたらゲーム機の前に立っていた。数秒気を失ったあと正気に戻ると100円玉を握りしめているではないか。しょうがねーなー、一発遊んでやるか。パズル系を得意とする私だが、反射神経を試されるシューティング系、同期に負けてから本気で取り組んでいるガンショット系にも目がない。只「上上右左うんぬん」と技を覚えなければならない格闘系には全く手をつけていない。

 少し寄り道をくってしまったが、ゲーセンの斜め前に店を構えるCDショップへ。大きさは20畳ほどであろうか。品揃えは少ないが、最新ものはクマなく取りそろえているので、目的を持って購入するには不便はない。私は学生時分から中古CDショップをフラフラとめぐるのが好きだったので、目的を持たない場合には中古CDショップを徘徊することにしているからだ。中央にあるテーブルの上には「買ってください」と最新ものが並べられている。その中でも異彩を放っているのはGLAYのニューシングルだ。ビデオよりもでかいパッケージには何が入っているのか気になるところだが、今日の目的はコイツではない。その隣にやけに小さく見える本日発売のニューアルバムを購入しに来たのだ。

LANI KAI

夏の代名詞ともいえるチューブのニューアルバム。ふ、ここまでは前フリだ。

 ミディアムテンポのナンバーが並んでいる中で、シングルの「Truth of Time」「虹になりたい」に代表されるようにアコースティックな曲が多いな、という印象を受けた。その中でも「-恋愛旅団-」に繰り返し現れるフレーズが耳に心地よい。

 「楽譜なんて見るの中学生以来やなー」という人たちもいるだろう。これはギター用の楽譜なのでト音記号とかはない。おたまじゃくしの代わりに数字が並んでいるのが特徴的。太線の下に「3」と書いているのは「3連符」っちゅーやつで、これ3個セットで4分音符と同じ長さというやつだ。どーだ懐かしいだろう? 最後の黒いのは「2分休符」だ。これとよく似ているヤツで「全休符」というのがあって、音楽のテストで絶対に出るあれだ。いやー音楽の授業も意外に役立つもんやな。
 「Over the TEARS」のクレジットは作曲:春畑道哉となっているが、サビの「風を感じてた 今を抱きしめた」というところは前田がテレビで作曲していた。アメリカを旅する番組だったが、どこかの海岸(砂浜ではなく崖の上)で前田がギターを持って「風が強いねー」とかいいながらでてきたフレーズがこのサビだった。こんな風に曲になるんやなー。
 さて一番のお気に入りは「Half Moon」。月シリーズやな。ミディアムテンポのロック。

 さあ、これから夏本番。涼しい部屋でチューブを聴いて夏を満喫しよう。

<N@O>