〜まとめ〜

とにかく今回のライブは、ホールというよりも、ライブハウスで聞いているような素晴らしい感覚を体験。昔、達郎は東京の六本木ピット・インというライブハ ウスで頻繁にライブを演っており、その写真を見たことがあるが、自分がまるでそこにいるかのよう。ライブはたっぷり3時間超。MCを所々で挟みはするが、 ほとんど休みなしのじっくりの演奏。
 
今日、ライブはDVDで気軽に見られる時代になった。家でライブの臨場感を味わうことができるというのは素晴らしいことだが、果たしてそのシチュエーショ ンで、音楽を愛する人間が心の底から満足できるか、甚だ疑問である。達郎のライブ映像は世の中で流通しているものは一切なく、ライブのみでしか生の達郎を 見ることができない点で、ライブチケットは値千金の価値がある。
いつも感じることであるが、音楽を聞くと、それをタイムリーに聞いていた若かりし頃の記憶がフラッシュバックする。3時間を過ごしたこの空間では、15歳は若返ったようである。
そして、高級で奥ゆかしい料理を堪能するように、洗練され華麗な音楽は若い頃に聞いて味わうことが大事だと感じる。なぜなら、この経験によって、一生持ち 備えることとなる人間の感性が磨かれるはずであるから(実際の自分は残念ながら、“?”だが)。
 
達郎の音楽ルーツは、アメリカ50年代・60年代のリズム&ブルース、ロックン・ロール、ドューワップ、ビーチボーイズ、ベンチャーズなど。この頃の音楽 をこよなく愛し、日本の音楽よりも海の向こうの音楽に憧れ、自分流の表現力でこれらをシンプルかつエモーショナルで渋い音楽に仕立て上げる。日本人の頭脳 を駆使して作り込んだ付加価値を原材料に染み込ませて外国に売りさばく、70〜80年代の日本のお得意の商売のやり方に似ている、とまでは言わないもの の、とにかく、洋楽を、和の音をベースとする歌謡曲に慣れ親しんだ日本人にも理解できるようにアレンジし、洋楽を愛聴することによって培われたオリジナリ ティを植え付けるという点では、日本ポップス界のトップに君臨するプロ中のプロのMusician、音楽クリエーターである。音へのこだわり、作った作品 の出来栄えに対する妥協はあり得ない、音楽を作るための機器・ハードウエアなどのテクノロジーとの苦闘、理想の音とのギャップに悩む葛藤などは、職人であ るが故のさだめなのであろう。
 
自動車やデジタル機器と同様、昨今、音楽は大量生産・大量消費の時代の渦に巻き込まれ、これが進むにつれ音楽の賞味期限が短くなり、”使い捨 て”同様に扱われるようになってきている。昔ほど音楽が大切に扱われない、悲しい世の中にある。こういう時勢の中でも達郎は、決してデジタル に偏りすぎないレコーディング手法をとり、デジタル録音であっても敢えて生の音を重視・アナログ的アプローチをとる。スタジオでは、時にはギターから始ま りピアノ、ベース、ドラムまでありとあらゆる楽器を使いこなしてコツコツ音を重ねていく、地道で緻密な作業の繰り返し。達郎の曲は、このような手作りの作 品であるため、聞く側としては他の音楽と違って、作品に対してひときわ価値と愛着を覚え、そしてそこにこそ、達郎ポップスの美学を感じる。
 
1つ、小田さんのライブ。CDで聞ける声はライブで忠実に再現され、年齢を重ねるごとに熟成されて人の心をとらえて離さない表現力と歌のうまさと癒し効果は、今さら説明する必要もない。
2つ、TUBEのライブ。前田さんの圧倒的な声量と高音域での伸び、そして艶やかなダンサーと振り付け、花火や水柱のアトラクションで、心の底から汗をかくエキサイティングなひととき。
3つ、サザンのライブ。相変わらずの少々下ネタあり、熱狂乱舞あり、聞かせどころあり、そしてスタンド&アリーナの聴衆とステージの心を一つにする桑田さんのエンターテイメントの巧さ。
しかしながら、達郎ライブがこれらを超越する理由は何か?
 
それは、“ポピュラー・ミュージック”というカテゴリーに入れるにはもったいないほどの、熟練の技術と微に入り細にこだわった演 奏、ロックンロールの神様が乗り移ったかのような達郎の気迫と集中力である。具体的には、一人アカペラなどを通じて昔の曲を再生させ、タイムリーにその曲 を聞いていない世代にもその輝かしい時代のテイストや文化を伝承していくという、音楽人としての任務・役割をきちんと果たしている点。そして、それらが世 代を超え、いつまでも風化することなく、達郎流ポップスとして息を吹き返し、新鮮でエネルギーに満ちあふれた状態として保存されていること。 “音楽は、賞味期限は永遠で普遍であるべきだ”、これが、個人的に感じる、この人の音楽へのポリシーである。
 
最後になるが、小田さん、桑田氏、そして達郎、80年代の10代の頃に聞いて衝撃を受けた音楽が、今もなお、“そこ”に存在す る。この方々が今日でも現役でステージに立ち、昔と変わらない名演・名パフォーマンスを魅せてくれているというありがたい事実に、深い感銘と感慨を覚えず にはいられない。
 
そして最後は、この人の言葉を借用して終わりにしたい。
“ロックン・ロールよ 永遠なれ”
 
完





<EZ>