Part2

〜安全地帯〜



 秋が深まる中、ちょっと感傷的な想いに浸りたい。秋は哀愁の季節、”オフコース”か”安全地帯”が聞きたくなるのは、この季節が促す条件反射か?

 ふと、CDショップで「安全地帯」のところを見ると、「安全地帯 LIVE〜月に濡れたふたり〜」というCDがあった。いまどき、ライブCDとは。しかも、ライブは1988年に行なわれたものである。DVDが普及し、最 近はほとんどライブアルバムにはお目にかかれないのに、なぜ?
 しかし、ライブアルバムは非常に味わい深い。”音”が生きており、Musicianのenergyを感じる。この状況では、人 間の五感の中で”耳”しか使用できないが、”耳”が五感の中で最も重要ではないか。DVDでは、映し出 される映像に神経が集中し、五感の中の”耳”がもつ能力をフルに活用することは不可能である。”音”の みの世界では、自分の頭に構築されるライブパフォーマンスのイマジネーションが発展し、想像が膨れ上がる。あたかも、ライブを至近距離で見ているようなう れしい錯覚を味わうことができる。映画やTVドラマの原作を本で読むと映像より面白い、というのと似ている。これが、ライブアルバムの持つ恐るべき威力で ある。また、ライブアルバムは、Musicianに歌・演奏の本当の実力がないとリリースできない、ごまかしがきかない。

 という点から、珍しいので購入して聞いてみると、高校時代にTVで見た”安全地帯”の全盛期がそこにはあった。玉置浩二の声が 若く、”熱視線”を放つ華麗なアイ・シャドウと独特のシャウト、囁くようなオトナの色気とセクシーさに魅了される。さらに、ツイ ン・ギターによる3次元的な立体感と妖艶で繊細な音作り、18年前の音とは思えない。
 この躍動感により、安全地帯がもつ力の120%を見せつけられた感がする。
とにかく、曲目群がすごい!ライブ版ベストという感がある。
 ワインレッドの心、熱視線、じれったい、碧い瞳のエリス、好きさ、I LOVE YOUからはじめよう、悲しみにさよなら、真夜中すぎの恋、月に濡れたふたり、あなたに、など名曲がずらり。30代半ばの年代なら必ず耳にしたあのサウン ドが。独断場のマイナー調哀愁ロック、これと対峙する温かいバラード。これらがうまく融合しあって、80年代には安全地帯の”一時代 ”があった。

 80年代に一世を風靡した”安全地帯”は、”甘い誘惑”、”許されぬ恋”、 ”熱い口づけと喘ぎ声”、”都会の夜の密会”、”幻想と夢”、などパープルな 世界を描く。特に、80年代のシングル群はその色が強い。当時、高校生の自分にそんなアダルトな世界が理解できるはずもなく、大学生になってからやっと歌 のエッセンスが少しわかったような気がする。マイナーな曲調がもたらす哀しい恋の側面と計り知れなく執拗な女心の深さ、そして、恋の深みにはまっていく悲 しい男女の人間模様・・・。

 エレキ・ギターは安全地帯の音楽を聞く上で欠くことはできない。特に、”ワインレッドの心”、”真夜中すぎの恋 ”、”マスカレード”に見られるような渋いギターによるイントロ。メンバー5人のうち、ギターリストが2人というこ ともギターに対する深い思い入れを感じる。とかく玉置浩二の甘いボーカルに聞く耳を奪われがちであるが、バックの渋いギターの音にもぜひ神経を注ぐ必要が ある。

 転機となったのが、90年発売のアルバム「安全地帯 〜夢の都〜」。
ジャケットは雄大な(北海道と思われる)自然をバックに5人が並ぶ。7月発売のためか、これまでと違って夏を意識した曲群が並ぶ。聞いていると、北海道の 地平線が想像される。果てしなく広がる地平線に映し出される夕闇とこの地球を支配していると錯覚している人間との対比。大地の息づかいが聞こえる。人間は 本当にちっぽけであることを感じさせる。
 メンバーは全員北海道出身のためか、故郷の北海道をアルバムサブタイトル”夢の都”とダブらせているようにも思える。
そして、92年のシングル「あの頃へ」。雪深い北海道への想いと故郷をしのぶ人間の心情。都会に育った人間には到底想像できない故郷への慕情。雪解け水によって山河が潤う春はまだ遠い。。。
 その後の安全地帯は、哀愁ロックを盛り上げるエレキ・ギターのうなりは影をひそめ、アコギ主体のアコースティックなサウンドが増え始める。
夜の闇を照らすネオン・ライトが眩しい”都会の夜”のあの強烈なイメージはなくなってしまったのが、ちょっと残念ではある。

 鮮烈なサウンドを世に送り出した”安全地帯”。
最も魅力的でセクシーな、80年代の”安全地帯”を我々は二度と見ることはできないであろう。
 しかし、あの”安全地帯”が作り出した音楽は、我々の脳裏には今でも活き続けており、”あの頃へ”と自らの過去を省みる貴重な時間を捻出してくれる。これぞ、音楽が潜在的に持つ底知れぬパワーなのかもしれない。
”80年代の安全地帯”に乾杯!






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