しかし、このテープの効力を如何なく発揮するには、日本の夏だけではなく、海外の海 でも展開したい、という強い想いがあった。眼前のマリン・ブルーの海で、夏ソングの世界に溺れたい。車の中で聞く、夏ソングが創出する”空想 の開放的な空間”ではなく、実際にこの手に夏空間をつかみたい! というわけで、リゾートに飛び立ち、'96に念願のニューカレドニアやパラ オの海へダイブした。

さて、この”特別仕様”のカセットを作る手順は、以下の通りである。


(1) その年の5月〜8月にリリースされたシングルあるいはアルバムで、夏ソングを片っ端から集める。イントロから中盤まで聞いて採用するかどうかを決める。
(2) 60分テープに収まるよう、さらに曲を絞る。なぜ60分かというと、46分は短いし、90分となると聞いてるうちに集中力がなくなってくるし、内容的に2等級の曲まで入れることになってしまう。
(3) 曲順を決める。特に、A面の1曲目から5曲目が重要。
野球の打順を思い出してほしい。
1番は夏への切り込み隊長、2番はアコースティック系でミドルテンポのものを選んで確実にランナーを進めてクリーンナップにつなげる。3番は攻・走・守の3拍子そろったナンバー(?)を。
4番はその夏の”テーマ”となり、テープの”核”となる曲を。
5番は4番を後押しして塁上にたまった走者を一掃し、”夏”へ加速するパワーのある曲を選ぶ。
そして、B面のラストには、夏のたそがれにぴったりのバラードを入れて、「今年の夏ももう終わりだなあ」、と一人感傷にひたる。
驚いたことに、TUBEのアルバムは、このパターンを守った”起承転結”の極めて優れたアルバムが数多くある。感服する。
(4) 曲順が決まれば、テープに録音していく。ここで注意が必要なのは、すべての曲の音量が等しくなるように、録音レベルを合わせることである。うまく、A 面・B面の時間内に収まれば、全曲のイントロを聞いていって、曲順の流れに無理がないか、うまく調和しているかを確認する。
(5) テープ製作の夜に初めから終わりまでを、夢うつつ、ベッドの中で実際に聞く。OKなら、カセットを持って夏へ飛び出そう!


 テープなので、一旦録音すると順番の修正は利かない。車の中で快適に聞くための曲順をじっくり検討する。何事も、出来上がるまであるいは購入するまで、いろいろと構想するのが一番楽しいのは同じ。
 そういった試行錯誤を繰り返して完成した「Sea Breeze’96」はというと


A面
1. 振り向かないで('96) ANNA(角松敏生プロデュース)
2. あの夏にもどりたい('96) 杏里
3. Only You 〜君と夏の日を〜('96) TUBE
4. 太陽は罪な奴('96) サザンオールスターズ
5. 太陽は知っている ('96) 杉山清貴
6. Sunshine Romance('93) オリジナル・ラブ
7. こぬか雨('96) 山下達郎
 
B面
1. Celebration On The Beach('96) 杏里
2. いちばん近くにいてね('95) 大黒摩季
3. 裸天女(ラテン・ガール)('92) TUBE
4. コカ・コーラのテーマ
(アカペラヴァージョン)('79)
山下達郎
5. Words of Love('96) オリジナル・ラブ
6. 二人の夏('95) 山下達郎
7. 夏の日の1993('93) Class


 ということで、かなり満足のいく内容となった。しかも、クリーンナップが、我々の世代では、”夏の御三家”とも言える、「TUBE」、「サザン」、「杉山清貴」ときてるから、サマーソング大盛況の年であった。


続く



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