2003年、夏。日照時間の短い夏だったらしい。 しかし、9月に入ってから夏日が多く、旧暦のように気候がずれているようだ。 9月7日、大阪の中心 梅田はうだるような暑さだった。 初めての参加となる角松敏生のライブのために訪れた灼熱の都市・・・。 和製AORの大御所 角松敏生。今年は、80年代にカムバックすべく、夏・海をテーマにしたアルバムをリリースした。アルバムタイトルは「Summer 4 Rhythm」。ギター、ベース、ピアノ、ドラムの4つの音がアレンジの基本だ、という主張からか?夏向きの涼しいAORが収録された最新作である。ひょっとしたら、あの80年代の角松AORが聞けるのではないかとの期待から、チケットを入手した。ギターとカメラ、そしてAORも好きなTUBEチームメンバーの一人、n@oも誘った。 80年代と言っても、私が実際にむさぼるように聞き入っていたのは今から10年ほど前である。リゾートに持っていくなら、必ずお供させていた音楽だった。 80年代後半、アレンジャー・ギターリスト"角松"は知っていたが、ヴォーカリスト角松との出会いは、92年のサークルの春合宿であった。伝説となっている野郎だけでの"牛窓リゾート"での合宿である。'81リリースのデビューアルバム「Sea Breeze」を抱えて、日本のエーゲ海へ旅立った。知る人ぞ知る、春のみ現れる同学年の上田氏も参加。そして、彼もまた角松を知っており、氏の運転する車内で大いに盛り上がったのが懐かしい。 もう1点、94年春、南半球オーストラリア。シドニーに1ヶ月滞在した際には、2枚組ベスト「角松敏生1981-1987」を携え、雄大な自然の中で大いにリゾートAORを楽しんだ。向こうで知り合った東京出身の"鶴田真由"似の女の子とドライブに出かけた風景、夕暮れのビーチ、海に沈む夕日など、想い出のひと夏と自分だけの世界を満喫できた。彼女も角松を知っていたのは嬉しかった。(このとき、TUBEのアルバム「浪漫の夏」を持って行ったが、アルバムとしてはこれしか持っておらず、知識がなかった。「浪漫の夏」を車でかけると、彼女は「どの曲も同じに聞こえるわ。」とつぶやき、自分も納得せざるを得なく、苦笑していた。まだ、TUBEに対する認識が甘い時代だったな、と今さらながらに思う。) 従って、角松といえば、どうしても牛窓+シドニーと切っても切り離せないものとなっている。 ライブに話を戻そう。 ライブ参加の年齢層にまず興味が向いたが、やはり予想通り高かった。角松敏生が今年で43だから、同年齢層が圧倒的に多い。我々30代前半は一番若い。93〜98年夏までは、活動を凍結していたから、その頃、海や山へと青春時代を過ごした世代にはあまりなじみがないのは無理はない。80年代を角松と共に20代を過ごした人たちが集まってきているのだろう。 ステージの様子は、椰子の木にバドワイザーの看板が並んで、リゾートのプールバー風。潮風の香りと波の音がどこからともなく聞こえてきそうな、リラックスした雰囲気。大人の音楽を聞くにふさわしい演出であろう。
初めて参加のライブというのは、どう反応したらいいのか戸惑いが隠せない。1曲目から立てばいいのか、はたまた座ったまま手拍子のみでいいのか。 拍手と共に、角松氏が真っ白なスーツで登場。 オープニングは予想通り、ニューアルバムの1曲目「Beam」。インストアルバムのオープニングを思い出させる透明感ある涼しいシンセサイザーの音とギターによる左右スピーカーからのセパレーション。夏の到来を感じさせてくれる。これぞ、夏・海・AOR。声の調子もよく、迫力あるヴォーカルに圧倒される。バンドの構成は、ギター、ギター、ベース、キーボード、ドラムの5人で非常にシンプル。女性コーラスの曲が多いので二人ほど引き連れているのかと思ったが、コーラス用の人員はなし。ギターは二人であるが、角松がヴォーカルとギターの二役。山下達郎と同じスタイルのライブ。自分で、ギターソロとリズムギターのイフェクト(?)の切り替えを足で行う姿も微笑ましい。スタンドマイクで歌う姿よりも、やはりギターを抱えて歌う姿の方が角松らしい。音の合成と各楽器間との連携など、CDに収められているものと全く同じグルーブを出しているところは、やはりプロフェッショナルだ。 2曲目「All'n All」。ベースの重低音によるイントロ。角松の曲には、ベースによるイントロのナンバーが多いのも嬉しい。3曲目もニューアルバムから、と思いきや、'85リリースのアルバム「Gold Digger」から「Melody for you」。アメリカ西海岸に持っていった最高のクルージングナンバーだった。 波のSEが聞こえてくると、ステージ後方のスクリーンには海辺の夕暮れの景色が映し出された。ここから波の曲、3連発。 まずは、ニューアルバムから「波を超えて」。曲が終わると、再び波のSE。 2曲目はデビューアルバムのラストに入っている極上のバラード「Wave」。左横の女性が、「嬉しいっ・・・」と小声で呟いたのが聞こえた。そう、私も同じ気分。 ♪夕陽が沈み出す 夏を連れ去っていく 浜辺に二人だけ 潮風が髪にまつわる・・・
の歌い出しの部分から、夏の黄昏時を最高潮に盛り上げてくれる曲。さらに、間奏のギターソロには涙が止まらない・・・。3曲目、「Mermaid Princess」もかなり思い出深い曲。10年前を思い出し、聞き入ってしまった。波間のせつない恋。この辺りのバラードになると、ギターソロは欠かせない。 お得意の久しぶりの"空港もの"は「Last Flight」。過去に「Ramp In」という"空港もの"名曲がある。シドニーでの別れが今でも思い出せる。だからというわけではないが、角松バラードの3本指に入る珠玉のバラードで、何度聞いてもいいものはいい、あのキラメキは永遠に色あせることはない。「Last Flight」はその続編とのこと。イントロはピアノで始まり、Bメロからドラムが入り、間奏のギターソロ、最後に転調するというお決まりの形だが、音の広がりが美しく奥行きのあるサウンドになっている。今回は、"再会"をテーマにしており、結婚式などで使用して欲しいとの個人的なコメントがあった。すっかり、ドラマの主人公になったような気分になり、自分だけの世界にハマってしまった。 さらに、お気に入りの「Take Me Far Away」。夜のフリーウェイを突っ走るのにふさわしいGrooveと重低音のベースがフューチャーされている。アルバムでは、バックの女性コーラスがサビを最高に盛り上げてくれてFunkテイストたっぷりだったが、本ライブでは前述したようにコーラスはなし。だが、曲に聞き入っている数分間は、完全に記憶は10年前にブっ飛んでいた。
嬉しいことに、'87リリースのインストアルバム「Sea is a Lady」でのシングル「Sea Line」登場。"Summer Medicine"シリーズの代表曲であるが、リゾートには必須のマリンブルーの絵音楽の世界。"爽やか清涼剤"としか表現のしようがないフュージョン。パーカッションがなかったのが残念だったが、またしても角松の熱いギターパフォーマンスを見ることが出来、感激。まっさか、今回のライブで聞けるとは思わなかった。しばらくは、アルバムからの曲であった。 アルバム3曲目の「真夜中の太陽」はシングルにしてもいいような売れ線ナンバー。最も気に入っている。今年の夏、能登半島千里浜なぎさドライブウェイの夕暮れどきにこれを聞きながら走った。これほど素敵な夏の瞬間はない。ぜいたくな時間がスローに流れていた。 アンコール1の1曲目は、何が何だかわからなかったが、突然、観客が紙飛行機を飛ばしまくり始めたのですぐにわかった。"紙飛行機伝説"を生み出した20年前のヒットシングル「Take You To The Sky High」だ。あっという間にステージは紙ヒコーキだらけになってしまった。こんな光景みたことない。阪神ファンが7回になると風船を飛ばすように、おきまりの儀式というのがどんなものでもあるのだと、妙に納得してしまった。 それにしても演奏が長い。アルバムでは時間の関係か、ヴォーカルが終わった後はしばらくのギターソロの後フェードアウトしてしまうが、ヴォーカルが終わった後も延々とアルバムでは聞けないギターソロを聞かせてくれる。ヴォーカルとギターソロのMixture。インストのアルバムをリリースしているだけあって、ギターリストとしての角松敏生の姿を見ることができるのもライブならでは。ますます、山下達郎のライブに似ている。1975年ごろ、達郎率いる今では伝説のバンド、シュガーベイブのライブを見て、衝撃が走ったというから、達郎の影響力は計り知れないものだったのであろう。 アンコール1が終わり、アルバムの曲すべての演奏を終えたのに、観客は帰ろうとしない。状況がわからないので、とりあえず見守っていると、歓声とともにアンコール2が始まった。 夏の余韻を残すかのような「No End Summer」。 そして、デビューアルバムに収録されている「Still I'm In Love With You」。20年の歳月を経ても、歌い続けられている名曲中の名曲。年上の女性に振られて悩んでいた友人のために、19歳のときに作ったという。アコギ一本のおなじみのスタイルだが、個人的には'81デビューアルバムのアレンジが一番好きだ。Bメロからは聴衆による歌声が場内に響き、ほぼ合唱状態。なごやかな雰囲気であった。 これにて、ライブ終了。 今回のライブでぜひ80年代ものとして聞きたかったのは、デビューシングル「YOKOHAMA Twilight Time」、'86シングル「Best of My Love」、「YOKOHAMA Twilight Time」のB面(懐かしい表現!)である「Summer Moment」、'83シングル「Take You To The Sky High」のB面「Lonely Goofy」、などぐらいか。さらなる夏・海ものの曲群を目の当たりにする瞬間は、次回に持ち越されたようだ。
ライブの感想であるが、MCでの語りが多かったのが第一の印象。 低音の早口で、次から次へと話題が変わって聞き取りにくかったのであるが、なかなか勉強になるようなことも語ってくれた。あの頃は良かったなあ、と後ろを振り返るのではなく、今の自分が一番好きだと言えるような作品を作り出すべきである。「最新作=最高傑作」であるはずだ、と。この言葉は、我々にも当てはまるものであり、教訓を聞かせてもらったような気分である。今回のコンサートで、80年代の曲を中心にステージに出したのは、今の自分の立っている位置を確認するためのものであり、今後の自分の進むべき方向性を模索あるいは決めるためのものでもあると、語っていた。 また、本人曰く、今の角松が一番"旬"であると。確かに歌唱力は昔に対しては比べようがないぐらい、ヴォーカルに伸びと奥行きが加わっている。しかし、どのようなミュージシアンでもそうであるが、私は敢えて、ミュージシアンが20代の頃に作った音楽が一番"旬"だと思う。 20代・・・。がむしゃらに、後ろを振り返ることもなく、まっしぐらに駆け抜ける時代である。批判を浴びようと何を言われようが、自分を通す時期である。ミュージシアンの音楽活動もまさしくその通りであり、青いとか未熟とか言われても、この頃に作られた音楽は、ストレートで飾り気がない。 ライブを振り返り、「夏=角松AOR」の方程式はこれからも揺るぐことはない、と悟った。TUBEもいいが、こんなにゆったりした雰囲気の中で、涼しい夏の音楽を聞くのもいい。 それよりも、こんな閉じ込められたホールのような空間ではなく、開放感のある涼しい海岸でバーベQでもしながら聞く角松は最高だろうな!! これからも、角松氏には、夏ものへの情熱を忘れず、涼しい夏を演出する”大人の音楽”を作り続けてもらいたい、と心から願う。 |
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