伊勢の赤福餅、京都の八つ橋、モロゾフのプリン。
(個人的な感覚で恐縮だが)これらに共通しているのは、いつ食べてもいつも同じ味を楽しめ、落ち込んだ時でも幸せな気分にさせてくれる。そして少し時間がたつと、また食べたくなる。そんなお決まりだが、ちょっとホットした時間を味わえる。
とにかく期待を裏切らない、安心して楽しめる。これに匹敵するのが竹内まりやの音楽。

87年にリリースされた「リクエスト」は演歌のようにロングセラーとなった彼女の代表作。それから5年経ってリリースされた92年の「Quiet Life」。20年数年も前だが、あの5年間ほど彼女のアルバムが待ち遠しかったことはない。
今回あのときほどこの方の音楽を待ち遠しく焦がれていたか?と聞かれると、正直その感は弱い。
しかし、実際にアルバムを手にし聞いてみると“あのときの感激”が蘇る、やっと再びお目にかかれましたね!と。




まりやメニューのフルコースが詰まったアルバム。従来からのラインナップは、
・レモンライムの青い風、アメリカンっぽいライトなポップス
・乙女チックな10代の心(セルフカバーに多い)
・モノクロな歌謡の世界
・純愛系バラード
・3連ロッカバラード
・許されない恋に戸惑う20代のOL

年齢を重ねてますます磨きがかかる表現力、そして艶のある声。デビュー当時からこの艶やかな声質が変わることなく、衰えなど微塵も感じられない。
7年前の前作“Denim”はせつない曲が多く、ちょっと気持ちが落ち込んだ時にはあまり手が伸びにくい作品であった。
今回は応援歌が多く、つらいとき限界を感じた時には何よりも自分を発奮させてくれるドリング剤のようなアルバム。彼女ももうすぐ還暦を迎えるが、家族のために一心に働く40・50代や若い世代に対してエールを送る年代となった。
しかし時には10代、20代の頃に誰でも経験した甘酸っぱい恋を歌い、40代や50代のリスナーが忘れかけた“蒼い記憶”を揺さぶってくれたりする。

達郎氏とまりやさん。まさに、映画監督と女優の関係だ。
夫婦で二人三脚。
女優の作ったストーリーアイデアから脚本を作り自らメガホンを手にする監督、しかし女優に自分の趣味を強いることなく自分が表現したいように役柄を演じさせるという、とても心の広い監督だ。
女優はとにかくあらゆる場面で自分が思い描くヒロイン(男性歌詞の場合はヒーロー)になり切る。
歌手は俳優である。ビジュアルなしに歌の表現力のみで勝負するという点では、映画女優よりもその真価が問われる。



人に提供した曲、それはすでに自分の手を離れ、その歌い手のアイデンティティで既に染められている。しかし、セルフカバーの難しさをいとも簡単に克服して自分のオリジナルにしてしまう。
今年の秋から冬にかけて、久しぶりに“まりや・マイブーム”に浸れること間違いなし!
7年間のシングルは、達郎氏のラジオで聞くぐらいでCDであえて聞いたりしなかった。
しかし、それは正解だった。ほぼ初耳のような状態で先入観ほぼ“ゼロ”の状態で曲に接することができたおかげで、その分の濃厚な印象を焼き付けることができた。

いつも通りの彼女の音楽を感じることができる今回のアルバム。これ以上何を求める必要があるのか?
これからもこの癒しと安心感得られるアルバムを継続して提供してくれることを切に願う。

以上




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