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確か86年の8月だったと記憶している。 当時の自分にとっては“山下達郎”は敷居は高く、近寄りがたく雲の上の存在。 そんな時代に、音楽評論家 渋谷陽一氏のFM番組で“山下達郎”特集があり、番組スタッフが彼のヒット曲をつなげてメドレーにした音源が流れた。 そのメドレーの最後を飾ったのがこの曲。これがこの曲との出会いだった。当時この曲は世間一般にはほとんど知られていなかったと思うが、心臓をわしづかみされ、数分間で一目惚れした記憶はいまだに鮮明だ。 しかも、この曲の間奏である一人アカペラの“パッヘルベルのカノン”の部分に、達郎の一人アカペラの“ホワイトクリスマス”を上から載せるというマニアックな演出であった(ラジオ番組プロデュサーの意図か? 渋谷氏自身、この作りはかなり凝っていますね、と苦笑していた。)この夜この番組を録音したが、そのテープは行方不明。非常に悔やまれる。 この曲は達郎の最高傑作の1つであることはまぎれもない事実であり、達郎の技と才能が色濃く濃縮され、それが曲全体に宝石のように散りばめられたアレンジとなっている。 「Musicianにとっての最大のライバルは過去の曲である」とよく言われるが、こんな曲を作ってしまったらこれを超える曲を作るのは達郎氏と言えども至難の技だ(だろう)。 エレクトリックギターでダビングされたアルペジオ風のイントロで“神聖なクリスマス”へいざなわれ、エレクトリックピアノの華麗な音色に魅了され、ラストの部分はコーラスが左から右へそしてセンターからと達郎のコーラスの掛け合い。凝りに凝ったアレンジは、「これぞ山下達郎」と思わせる金字塔の作品。30周年の今年からさらに30年後の世の中でも、日本中でこの季節になると街角で流れていることは疑う余地もない。 その後の大ヒットによりバブルの象徴のような曲となってしまったが、10代の蒼い少年に一瞬にしてときめきを与えてくれた偉大な曲である。そののち、Doo wopのカバーを一人アカペラにした曲を集めたアルバムを聞いたときには、この人の実力と才能にさらに驚いたが。JR東海のCMに使われ、牧瀬里穂その他数々の女優が出演しこの曲のサウンドにビジュアルを植え付けた。しかし、CMでこのビジュアルが作られる前から、この曲を聞いた時点で音から発せられる映像は我々が描くクリスマスそのものだった。真っ白に雪化粧した東京の街路樹やクリスマスアクセサリーで飾られた数メートルの高さのツリー、などが頭の中に映像として現出する。頭の中であの頃のときめきのクリスマスに酔いしれる。これは確信犯的な達郎氏のマジックと言える。 純粋なクリスチャンでもない日本人がクリスマスにひとしお思い入れがあるのはなぜか。それは、1年に1回欲しいものを買ってもらえた子供時代の胸躍る思い出から起因するのかもしれないし、またキャンドルで飾られたケーキを囲む暖かな家族団らんの時間なのかもしれない。成人してからは恋人とシャンパン片手に乾杯、結婚して家族ができたらまた自分の子供時代のように家族で温かい時間を共有。 日本人は一生を通してクリスマスという一大イベントを楽しむ術を心得ているが、この曲が慕われるのはこのような背景からかもしれない。 曲自体はHappy endingではないが、誰しも個人的な期待と希望をクリスマスに念じ、それがクリスマスが持つ独特の力によりもしかしたら叶えられるのではないか(子供たちがプレゼントを期待するのと同じく)という秘かな可能性を抱く、あるいは現実とは少しかけ離れた空想を夢見る時間。聖夜には何かが起こると信じたい。。。 あるいは、♪きっと君は来ない。。。と同じく、(過去に振られた人を思い出すのか)架空の恋人を作って追憶にひたり青春の1ページにハまるというのも粋であり、“クリスマス限定”の素敵な時間なのかもしれない。 以上 |
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