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酷暑の2013年の夏の暑さは和らぎはしたが、まだ残暑が残る9月中旬の神戸。久々のXdayが到来した。 コンサート開演前のホールには、アメリカ50,60年代のDoo-wopが流れる。もちろん達郎氏の自宅レコード棚からの“棚からひとつかみ”のレコードが音源だろう。ライブ前の少しノスタルジックな雰囲気は達郎ライブならでは。 昨年のベスト盤のリリースでファンの年齢層が広がったのか、若い層も結構多い。本日の席は前から6列目と、いつもと同じく良いポジション。ファンクラブの特権を行使。 ステージのトップナンバー「新・東京ラプソディー」は、88年のアルバム「僕の中の少年」の1曲目に収録されている、この夏の終わりにぴったりのナンバー。自転車に乗って街の木洩れ日を浴びながら聞くと最高の気分。シンセに重厚な生ベースの音が乗っかっていく迫力満点のイントロ。達郎氏の声の調子も絶好調で、数百回は聞いたあのCDの音は頭にしみこんでいるが、これを上回るド迫力の声量。ああ本当に達郎ライブに来たんだな、という実感がこみ上げる瞬間。 2曲目は、これまでのステージでライブのトップを飾る回数が多い「Sparkle」。鋭いギターカッテングはもちろん健在。これを見るためにライブに来ている、と言っても過言ではない。 3曲目「Love Space」は77年のナンバーで、この曲と言えば今はなきライブハウス“六本木ピットイン”を思い浮かべてしまう。難波氏のA.Pianoの技がすさまじく威力を発揮するナンバー。 “こんばんは、神戸!!”とここで初めて達郎氏の挨拶が入る。 あの「クリスマス・イブ」がひっそりと最後に収められているアルバム「Melodies」のリリース30周年、クリスマス企画アルバム「Season’s Greetings」のリリース20周年を記念して、両CDのリマスター盤が8月にリリースされた。それらは今回のセットリストにも反映され、ほとんどお目にかかれないナンバーの披露もあり、値千金のライブ。特に「Melodies」は私が思うに、豪華な多重コーラスと一人楽器演奏のすごさが如何なく発揮された、山下達郎のアイデンティティが最も反映されたアルバムと言える。これに乗じてか、一度は聞きたいと思っていた「スプリンクラー」も演奏され感激、まさに満足度はピークに達する。イントロの嵐のSE・迫力あるベース音はCDの音そのまま、いやそれ以上で臨場感あるサウンドがステージで再現された。 ![]() 情けない男を描いた曲はたくさんあるが最も情けないのはこの曲でしょう、とカッテングが渋い「Paper Doll」。CDでは聞けない、ギター・ピアノなどの楽器のソロをフューチャーした“インプロビゼーション”が見れるのはライブのみ。一人の歌手のコンサートというより、熟練のスタジオ・ミューシアンの技量を目の当たりにできる“プロ”のショーである。 達郎氏、E.Pianoの前に座り、名バラード「FUTARI」。これもおそらく20年ぶりの演奏。アルバムレコーディングでピアノを演奏していた伝説の名ピアニスト佐藤博氏が昨年亡くなったが、彼に対するオマージュも含めての演奏か。金字塔の82年のアルバム「For You」収録の荘厳なバラードを堪能させていただいた。 達郎氏の洋楽カバーはこれまで多数レコード化されているが、これはアメリカ50、60年代音楽に対する敬愛や献身を込めた、いわばそれらに対する情熱の発露といった感じである。本ライブでは、氏が敬愛するビーチボーイズとヤングラスカルズのカバーが披露された。CDで発表されたアレンジとは違うバージョンで。氏の音楽は、ブレずに普遍性がありいつの時代にも残るべくして残る価値を持つ。その根底に流れるのはこの古き良き時代のアメリカンミュージックである、と今更ながらに納得する。 達郎ライブの楽しみの1つ、それは達郎氏の伝家の宝刀“一人アカペラ”のコーナー。本人のコーラス多重録音のオケを使って歌うデイナーショーのようなひととき。今年は、先に述べた93年リリースのクリスマス企画アルバムからの2曲。ホールは、一足早いクリスマスムード一色。普段はヘッドフォンで聞くアカペラのオケだが、ホールに吊るされたスピーカから流れる音はホール空間に果てしなく広がりエコーとも相まって、3次元的な音の波となって観衆を温かく包む。 「以前に、ライブハウスでヒット曲なしのライブをすると言いましたが、50人ぐらいしか入れないスペースでのライブをやることはスタッフに断られました。」と。 ヒット曲など一切ありません、「スペース・クラッシュ」で始まり「サーカス・タウン」で終わるというセットリストです、と言うと会場から笑い声が巻き起こる。伝説の六本木ピットインでのライブのことだ。私も笑いに加担した一人であるが、「Ride On Time」でブレイクする前のコアでカルトな曲で固められたライブをいつかは見たい。 中盤にさしかかり、久々に出ました! 達郎ファンクの名曲「メリー・ゴー・ラウンド」。非常にメルヘンチックな歌詞と幻想的な月夜の風景が融合したアップテンポのナンバー。アルバム「Melodies」収録。 伊藤氏のベースが心臓近辺の胸腔をも響かせる渋い低音から編み出されるこのGrooveの深遠さはなんとも表現しがたい。 こういった曲で見られるようにイントロに低音のBASSをフューチャーさせるという渋いアレンジは、K松氏のアレンジと同様。いや、K松氏が達郎氏のアレンジを参考にしているのか? 個人的に最近BASSの音のカッコよさに目覚め、ライブでもやけにBASS演奏に目がいってしまう。 「Let’s Dance Baby」からは、“観衆は立ってもいい”という暗黙の了解で成り立っている達郎ライブ。例外なく、クラッカーも鳴らされ会場はコゲ臭いニオイでいっぱい。ここからが一番の盛り上がりどころ、「アトムの子」から「Loveland Island」まで一気に駆け抜ける。 アンコール前の数分間で、達郎氏は赤いワイシャツに着替え、再登場。 「クリスマスイブ」があのようなロングヒットになるなんて30年前は夢にも思いませんでした、ファンの皆さんに感謝、と曲紹介。 この曲の最大の魅力は、七色の声を駆使した凝りに凝った達郎の多重録音コーラスである。ライブではせっかくの3人のコーラス隊の出番がなく、コーラスはレコードのオケが使用されるという達郎のライブらしからぬ演出。コーラスの完成度が高すぎるため、生の人間の声でこのコーラスワークを再現することはまず不可能。80年代のゴージャスな達郎氏の多重コーラスがアダとなってしまったのか、オケを使用する点でこの曲の演奏は他の曲に対し違和感を感じてしまう。 バブル期真っ只中の日本、誰もがクリスマスを最大のイベントと思っていた当時の若い世代にとっては忘れられない名曲・古き良きバブルのLegacyであることは間違いない。 「Ride On Time」では、マイクなしでステージ最奥からの生声での熱唱。還暦を迎えた人間ができる技とはとても思えない、まさに口から生まれてきたような歌の神。。。 ラストは「Your Eyes」のアカペラバージョン。 これにて、あっという間の3時間15分の中身の濃いライブは終了! ちょっぴり毒舌のMC、20代の頃のキーでの歌唱、そして歌いながらのカッテングを主とした絶妙なギターの演奏。どれを取ってみても、この年齢でこれだけのパフォーマンスを見せることができる人は、日本にはこの人をおいて他にいないだろう。しかし、この年齢、すなわち38年のキャリアを積み重ねてきたからこそできるのかもしれない。なんともコストパフォーマンスが抜群に高いライブだ。 今回、これまで聞きたいと思っていた曲は結構網羅されたが、欲を言えば過去に演奏された曲で聞けるなら聞きたい曲は、「悲しみのJody」、「Only With You」、「マーマレイド・グッバイ」、「僕の中の少年」といったところか。 ライブ前の期待感に対し“十倍返しだ”と言わんばかりのパフォーマンス。いやいやこれを見ずして、“達郎の音楽とは何か”を語る資格などない。 還暦なんて関係ない、ライブが音楽人の活動の原点。一貫して職人気質の名演と名曲群。 生の演奏でこれほどまでにファンを魅了できるミュージシアンは今後輩出されるのか?これが最大の日本音楽界の懸念があるが、こういったベテラン・ミュージシアンに今後も若い世代を引っ張ってもらいたい。 ・メンバー 山下達郎(Vocal & E.Guitar, A.Guitar) 伊藤広規(Bass) 難波弘之(Piano) 柴田俊文(Keyboard) 佐橋佳幸(E.Guitar) 宮里陽太(Sax) 小笠原拓海(Drums) 国分友里恵(Chorus) 佐々木久美(Chorus) 三谷泰弘(Chorus) ・演奏リスト 1.新・東京ラプソディー(’88 僕の中の少年) 2.Sparkle('82 For You) 3.Love Space(’77 Spacy) 4.ずっと一緒さ(’08 シングル) 5.あしおと(’83 Melodies) 6.ひととき(’83 Melodies) 7.スプリンクラー(’83 シングル) 8.Paper Doll(’78 Go Ahead!) 9.FUTARI(’82 For You) 10.God Only Knows(Cover) 11.Groovin’(Cover) アカペラコーナー 12.My Gift To You(’93 Season’s Greetings) 13.Berra Notte(’93 Season’s Greetings) 14.Have Yourself A Merry Little Christmas(’93 Season’s Greetings) 15.Dancer(’77 Spacy) 16.希望という名の光(’10 シングル) 17.メリー・ゴー・ラウンド(’83 Melodies) 18.Let’s Dance Baby(’78 Go Ahead!) 〜19.硝子の少年(’12 Opus “Bonus Track”) 〜20.アイ・ガット・ア・ウーマン(Cover) 21.アトムの子(’91 Artisan) 22.Loveland Island(’92 For You) アンコール 23.クリスマス・イブ(’83 Melodies) 24.Ride On Time(’80 シングル) 25.愛を描いて 〜Let’s Kiss The Sun〜(’79 シングル) 26.Your Eyes(’82 For You) |
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