2002年春。
約3年振りに、達郎氏のコンサートツアーが行われることとなった。2001年の年末、ファンクラブのみのコンサート優先発売の案内が来て、居ても立ってもいられなくなった。この機を逃すと、今度いつ見に行けるかわからない。アメリカに出張が入る可能性があるにも関わらず、リスクを背負い申し込んだ。幸運なことに、今年の春の渡米は免れた。
1980年代後半。私は受験勉強真っ最中であった。真夜中の3時まで、なんていうのも普通の毎日だった。そんな深夜に、FM大阪では、しばしばアーティスト特集を放送していた。秋の夜長にラジオに耳をすますと、心地よい音楽が流れてくる。「高気圧ガール」、「Big Waveのテーマ」、「風の回廊」など、その当時、夏というイメージが個人的に強かった山下氏の特集であった。 今は肩身の狭い身分だけれど、大学に入ったらステレオ買って達郎のCDを全部集めるぞ、という希望をもって、毎日勉強に励んだ日々が懐かしい。
達郎というと、「高気圧ガール」、「クリスマスイブ」、「踊ろよ、フィッシュ」、「Get Back In LOVE」、「さよなら夏の日」、「ヘロン」など、おなじみのナンバーが多数あるが、あれは全て80 ~ 90年代。今回のライブは、76年リリースの「Circus Town」から82年「For You」までのアルバムのリマスターによる再発を記念してのライブ。初期のあまり売れなかった時代から、80年5月のシングル「Ride On Time」で一躍ポップスシーンに名を馳せた頃の昇り調子の時期までのヒストリーを、約3時間で振りかえられるというカリキュラムだ。従って、ライブはそれらの古い7枚のアルバムからのみの選曲である。20年前に青春を過ごした40代半ばの達郎ファンにとっては、痛いところを突かれる想いであろう。そんな私も、学生時代の前半は達郎一色であったので、あの懐かしい12、3年前にタイムスリップするが如く、ライブのため、神戸に出向いた。
観客はやはり、30代後半から40代の人が圧倒的に多い。ファンの年齢層は、比較的厚い達郎氏であるが、同世代の人からは圧倒的に支持されている。1階の前から4列目で、十分ステージの様子がうかがえる。演奏のトップはやはり、イントロのカッティングギターがかっこいい、「Sparkle」であった。達郎ポップスの頂点を極めた、キラキラしたナンバーである。ふと横を見ると、40半ばの女性がペンを持っていた。私と同じく、演奏曲目をメモっているのだ。イントロを聞いただけで、私はメモにタイトルをはっしょっていた(達郎、TUBE、サザンなら、昔懐かしい超ウルトライントロクイズでも、結構自信がある・・・)が、この婦人も結構達郎通のようで、曲が始まるとすぐにペンを走らせていた。
3年ぶりに聞く、達郎氏の生の声はすごかった。相変わらずのすごい声量である。それに加えて、ステージの上で演奏しているメンバーさえもが近付きがたいほどの、演奏しているときの集中力。こっわー、完全に自分の世界に入っているわ・・・。スタジオでのレコーディング時の、頑固な姿が目に浮かぶ。こうゆう気迫というか、職人気質の姿を見れるのも、ライブならではだ。
達郎は、ほとんどの曲で、リズムギターをとり、完全にバンドの1つのエレメントになっている。今までいろいろライブを見てきたが(TUBE、桑田佳祐、浜田省吾、稲垣潤一 etc)、ボーカリストがギターをほとんど肌身離さずに、歌うのはほとんど見たことがない。完全に演奏の一部に組み込まれているのだ。やはり「アルチザン(フランス語? で職人という意味)達郎」はステージでは健在であった、もうすぐ50だというのに。とはいうものの、MCではいつもの如く、おちゃらけを交えながらの気のいいおっちゃんである。こうも、歌っているときと雰囲気が変わるものか? 竹内まりやのアルバム、シングルのプロデュースも行いながら、自分の作品も書く。超多忙なスケジュールではあるが、納得のいく作品を世に送り出す意気込みが、ステージからこちらにビンビン伝わってきた。
そうそう、私は竹内まりやの大ファンでもあるのだ。「不思議なピーチパイ」のお姉さんもいつのまにか、いい年したおばさんになってしまったが、艶のある歌声は今も変わらない。彼女の曲で達郎の多重コーラスを聞くと、安心かつ家庭の温かみを感じ取ることができる。竹内まりやがあれだけ売れるのは、当然、音楽を知り尽くしている達郎氏のアシストがあってのことであろう。
ライブの話しに戻ろう。
アカペラコーナーでは、ディナーショーに来たかのようなパフォーマンスを見せてくれ、はたまた、派手なギターの演奏も披露してくれる。単なるシンガーではなく、それはまさに、一職人の姿であった。「アカペラ」という言葉を、世間一般に知らしめたのは、やはりこの人であろう。自分の声を、低音から高音まで何度も声を重ねて録る技は、職人がゆえになせるものである。彼のお気に入りのアカペラのスタイルは、アメリカの50年代から60年代の黒人音楽を起源とする「ドューワップ」というものであり、ひと縄筋にはいかない、黒人音楽への愛着というかオマージュを感じることができるのである。
達郎のメロディは、日本語よりも英語の方がノリが合う。音楽が完全にアメリカンスタンダードというか、ビーチボーイズというか、アメリカのオールディズが根底に流れている。あるときはファンクであったり、またあるときはドューワップであったり、リズム & ブルースとか。リズムが、日本人らしくないんだな。
ステージに22年振りにかける曲もあった。しかし、これらはレコードとほとんど変わらないクオリティーであり、歌唱力であった。ステレオで聞くのと、まったく遜色のないサウンドは、圧巻である。バンドサウンドを構成する楽器の音それぞれが、積み重なり、それにリードヴォーカルが乗っかかる。それぞれが際立つことなく、しかし、うまく調和してひとつのサウンドを生み出す。各ミュージシャンの動きを見ながら、ああこのレコードで聞いたあの音はアコギだったのか、ドラムのスネアか、とか、レコードで何度も聞いた"あの音"と楽器が一致するのを確認できるのも、ライブの醍醐味だ。もちろん、これはその演奏された曲のすべて知り尽くしていないと、楽しめないことではあるが。
終わりの「Ride On Time」では、恒例の、マイクを使わずに熱唱するパフォーマンスを披露してくれ、これだけでもライブにきて良かったと思わせる瞬間であった。「いつまでやれと言うのでしょうか?」とブツブツ言いながらも、聴衆の期待に答えてくれる、温かさを感じることができた。寄る年波には、さすがの職人も勝てないと思えるが・・・。最後は、アカペラヴァージョンの「Your Eyes」を聞かせてくれた。
ファンサービス満点の3時間半に及ぶライブパフォーマンスであった。また、いつ会えるかわからないが、自分が音楽を聞くきっかけを与えてくれた師匠として、いつまでも達郎の音楽は聞き続けていくであろう。今後の活躍を期待したい。もちろん、職人のライブも・・・。
演奏曲目(2002.3.25 神戸国際会館こくさいホール)
1 Sparkle
1982
アルバム「For You」
2 Love Space
1977
アルバム「Spacy」
3 ついておいで ~ Windy Lady
1976
アルバム「Circus Town」
4 Rainy Walk
1979
アルバム「Moon Glow」
5 あまく危険な香り
1982
シングル
6 Rainy Day
1980
アルバム「Ride On Time」
7 Paper Doll
1978
アルバム「Go Ahead !」
8 Candy
1977
アルバム「Spacy」
9 Solid Slider
1977
アルバム「Spacy」
10 Music Book
1982
アルバム「For You」
ピアノ弾き語りコーナー
11 言えなかった言葉を
1977
アルバム「Spacy」
12 潮騒
1978
アルバム「Go Ahead !」
13 2000トンの雨
1978
アルバム「Go Ahead !」
アカペラコーナー
14 You Belong To Me
1980
アルバム「On The Street Corner 1」
15 Blue Velvet
1980
アルバム「On The Street Corner 1」
16 Angel
1999
アルバム「On The Street Corner 3」
17 いつか
1980
アルバム「Ride On Time」
18 Monday Blue
1978
アルバム「Go Ahead !」
19 Touch Me Lightly
1979
アルバム「Moon Glow」
20 Love Talkin'
1982
アルバム「For You」
21 Bomber
1978
アルバム「Go Ahead !」
22 Silent Screamer
1980
アルバム「Ride On Time」
23 Let's Dance Baby
1978
シングル
24 Circus Town
1976
アルバム「Circus Town」
アンコール
25 Loveland Island
1982
アルバム「For You」
26 Ride On Time
1980
シングル
27 愛を描いて
1979
シングル
28 Your Eyes
1982
アルバム「For You」
29 おやすみ
1980
アルバム「Ride On Time」
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