![]() 「有馬記念」... 競馬に興味がない者まで虜にする暮れの最大のスポーツの祭典。そこには常にスターホースがいた。そして、年の瀬のライバル達の熱い闘いが、数々のドラマと感動を我々に与えてくれた。 1993年のトウカイテイオーの「奇跡の復活劇」を思い起こせば、今でも背筋が寒くなる... 思えば「競馬」というものを知ったのは、自然気胸という肺の病気を患い入院を余儀なくされた大学1年(1992年)の時だった。同室に競馬ファンのおじいさんと2つ年上の大阪府大生がいて競馬の予想でいつも盛上がっていた。かく言う私はその頃は競馬の「け」の字も知らなかった為、話題にはついていけなかった。 時は11月。3歳牡馬クラシックの最終章「菊花賞」が行われようとしていた。病室内では「ブルボン」の名が飛び交う。そう、この年、圧倒的なスピードと先行逃げ切りで「皐月賞」「ダービー」を無敗で征したミホノブルボンの史上初の無敗の三冠がかかっていたのである。誰もがブルボンが負ける姿を想像できなかった。いやそれどころかブルボンの前を走った馬はそれまで存在しなかったのである。 大歓声と共にレースがスタート。しかし、何と玉砕覚悟でブルボンの前を走る馬がいるではないか! しかし、まだ誰もがブルボンが勝つと信じていた。そして、直線でバテた逃げ馬をかわすと、やはりブルボンが先頭に。しかし、ゴール前、外から黒い馬体が猛然と襲いかかる。そしてそのままブルボンを抜き去りゴール。TVのアナウンサー、観客、そして入院患者の誰もが驚嘆と深い溜め息を漏らさずにはいられなかった。 このブルボン三冠の偉業を見事阻んだのは小柄で黒髪の美しいライスシャワーであった。ダービーも2着でブルボンの対抗と目されていた馬の悲願のGI制覇である。競馬の素人であった私は、三冠というものがどんなに凄いのかということと、それを阻止したライスシャワーという馬はこれからどんどん強くなっていくのではないかというのを感じた。(ちなみに、同室の競馬ファン達の馬券はただの紙切れに変わっていた。) ![]() < 〜帝王涙の復活劇〜 1993年 > 大学2年の1993年、3頭の若駒の熱き闘いが、更に私に競馬というものの魅力を教えてくれた。その3頭とはビワハヤヒデ、ウィニングチケット、ナリタタイシンである。「皐月賞」はタイシン、「ダービー」はチケット、「菊花賞」はハヤヒデが征し、3歳馬の熱いライバル同志の闘いにファンは酔いしれた。中でもビワハヤヒデは連を外さない安定した走りで、その年の年度代表馬に選ばれた。 そうそう、私のバイト先であるカラオケBOXには競馬好きが多く、いつも競馬の予想で盛上がっていた。私も自然に大きなレースの前になると、バイト中は仕事も程々に競馬の予想に明け暮れていたのを思い出す。 そして暮れの最大の競馬の祭典「有馬記念」。GI馬が8頭という史上希に見る豪華メンバーでレースが行われた。1番人気のビワハヤヒデが最後の直線で先頭に立つが、1年ぶりのレースとなる4番人気のトウイカイテイオーが久々を感じさせない豪脚を見せハヤヒデを交わし、感動のゴールを切った。「皐月賞」「ダービー」「ジャパンカップ」を征した後、骨折とスランプに身まわれた"皇帝"の見事な復活劇に按上の田原もファンも歓喜し涙を流した。 そう、この頃からである。私が「競馬」というものにのめり込み始めたのは... ・・・・・・・・・・・ 「競馬」..読んで字の如く、「馬と馬との競い合い」である。 たった2分程のレースであるが、人々はこれに熱中し、歓喜し、涙する。では「競馬」とは一体何なのであろうか?ギャンブルか?スポーツか?はたまた物語りか? ロマンか? 夢か? ...答えは一つではないし、人によっても感じ方がそれぞれで千差万別である。お金を賭けて一喜一憂するも良し、好きな馬を追いかけて応援するも良し、ライバル同志の熱い戦いに涙するも良し。 私の答えは決まっている。競馬は「スポーツ」であり、そして「ドラマ」である。 前述のトウカイテイオーの涙の復活劇で、もしビワハヤヒデに単勝10万円を賭けていたらどうだろう?!おそらく勝ったトウカイテイオーを恨めしく思い、復活劇に共感を覚えないであろう。それどころか、力を出し切ったが負けてしまったビワハヤヒデにまで憎悪感を覚えてしまうかもしれない。いずれにせよ、「テイオー復活 感動の有馬記念」は自分の中で「ハヤヒデ敗北 損失の有馬記念」に様変わりしてしまう。感動を皆と分かち合うということは、お金には換えられないものがある。そして、どのレースにも「ドラマ」は存在し、どのような結果でも「感動」は生まれるというのが私の自論である。その感動を心いくまで味わう為にも、「競馬」=「ギャンブル」とは考えたくないのである。。 とは言え、大学2、3年の頃はバイト先の競馬仲間が皆馬券を買っていた為、私も大きなレースでは馬券を買っていた(勿論、万単位ではないが..)。しかし、競馬とはJRAが儲かるようにできていて、簡単に勝てるわけでもなかった。(皆さんもハマりすぎに気を付けましょう!) では、どうやったら競馬で金儲けができるのか?どの馬が勝つかを見極めるポイントを以下にまとめてみた。 ![]() 《 あなたも競馬で儲けよう!! 〜冬男の競馬講座〜 》 <1>騎手 騎手が誰であるかは非常に重要なファクターの一つである。特に注意するのは、その馬にずっと騎乗しているかどうかである。ずっと乗ることで馬の特徴を把握し、癖を見出すことができる。レースでは仕掛けどころがわかったり、道中の折合いも付けることができる。馬にとっても同じで、慣れない騎手が乗ると落ち着かないものである。「乗り替わり」はかなり減点である。しかし、武豊や岡部幸雄などは乗り替わりでも上手く馬をなだめ、折合いを付けることができる。藤田伸二も乗り替わりは得意である。 そして、騎手によって得意なコース、得意な距離、得意な戦法というのがある。前述の岡部などは長距離を最も得意としており、関東所属ということもあって中山のコースが得意である。現・調教師の南井は騎手時代「豪腕」と呼ばれ、豪快なムチ裁きで追い込みを得意としていた。GIで連勝を重ねたタマモクロスの差し脚は南井あってのものである。小島太(現・調教師)の場合は、直線一気の追い込みしか手はなかった。私はサクラチトセオーという馬が好きであったが、彼はワンパターンと言われながらも、こだわりの直線一気で見事天皇賞(秋)を征した。(このとき馬券もゲットしたので良く覚えている)。対して、中館は「逃げ」を得意とし、ツインターボという馬を操り直線の短い福島競馬場で次々と先行逃げ切りを決めていた。残念ながら薬物使用で逮捕された田原は、かつては天才と呼ばれ、時々失敗も犯すが大胆な騎乗で数々の番狂わせを演出した。今でも鮮明に思い出す、1997年、天皇賞(春)。サクラローレル、マヤノトップガン、マーベラスサンデーの3強が注目を集めたレースで、田原は先行型のトップガンを後方待機でじっと我慢させ、直線で馬の能力を最大限発揮しライバルの2頭を差し切った。ゴール前、画面外から矢のように跳んで来たトップガンに驚愕を覚えると同時に、田原の天才たる所以をいかんなく発揮した騎乗であったと感じた。 <2>ローテーション 体重400キロを超えるサラブレットはたった2分のレースでもかなり体力を失ってしまう。かと言ってレース間隔が開きすぎると、レース感を忘れてしまいイレ込んでしまう。野球の投手なら「中5日」ぐらいのローテーションがベストであるが、サラブレットの場合は「中2〜3週間」がベストであろう。 サクラローレルは13ヶ月ぶりのレースとなるGI中山記念でジェニュイン以下を完封し勝利を挙げたが、この馬のように休み明けでも走る馬も稀に存在する。しかし一般的には、3ヶ月以上の休み明けはかなりの減点である。 <3>天候 馬場の状態も重要である。馬のヒズメは、それぞれ形によって滑りやすいものや滑りにくいものがある。また「跳び(一完歩)」が大きい馬も滑り易い馬場は苦手である。先日引退したナリタトップロードはヒズメが滑り易く、跳びが大きい為に重馬場を苦手としていた。また直線一気を得意としている馬も馬場が悪くなると届かないケースが多いので注意が必要である。 そして、重馬場や不良馬場の場合、踏ん張りが利かなくなる為に俊敏さよりもパワーが必要となる。よってレコードを叩き出すような快速馬は、雨が降った場合に力が発揮されないケースがあるので要注意である。 更に、雨そのものが嫌いな馬もいる。皐月賞、マイルチャンピオンシップを征したジェニュインは、雨が降ると集中力をなくしてレースで力を発揮できなかった。 <4>距離 距離も勿論重要なファクターである。レースの距離は短いものは1000mから長いもので3600mまであり、その距離に応じた「適性」というものがある。スピードがあるがスタミナが無い馬。また気性が荒く、勝負根性がある馬が「短距離向き」の馬である。対して、スタミナがあり、おっとりとして落ち着きがあり、騎手の合図に即座に反応できる馬は「長距離向き」の馬である。快速馬サクラバクシンオーはスタートして、いきなりエンジン全快で先頭に立ち、そのままゴールまで押し切る。まさに短距離向けの馬であった。2年連続で3200mの天皇賞(春)を征したメジロマックイーンはスタミナ抱負で、按上の武豊の合図に即座に反応するまさに長距離のスペシャリストであった。 距離を不問とする馬もいた。タイキブリザードは1200mから2500mまで幅広く活躍し、周囲を驚かせた。平成の最強馬と言われる3冠馬ナリタブライアンも、短距離のスペシャリストが集う1200mの高松宮記念に果敢に挑戦し4着と健闘した。 <5>年齢 競走馬は2歳からレースに出ることができ、4歳秋〜5歳春でピークを迎えることが多い。 しかし、中には「早熟型」と「晩成型」が存在する。2歳〜3歳でGIを征し、その後を期待された馬の中には早熟型も多数いた。ベガ、タイキフォーチュン、タヤスツヨシ、アグネスフライト、マイネルマックス等は4歳を迎えるとサッパリ勝てなくなった。特に牝馬の中には早熟型が多いとも言える。 対して、6歳でGIを征したトロットサンダーやオフサイドトラップ等は典型的な晩成型と言える。2歳〜5歳まで5つのGIを勝った歴史的名牝メジロドーベルや同じく2歳から5歳まで活躍した名馬グラスワンダー等は、その点、早くから息の長い活躍を見せ成長力が高いことを示した。その馬が早熟型か晩成型かは遺伝の影響も強く、親がどうであったかを調べるのは重要なことである。 <6>展開 馬には脚質があり、レースの展開によって結果が左右される場合がある。一般に逃げ馬、先行馬ならスローペース、差し馬、追込み馬ならハイペースが有利である。 私の好きな馬にカネツクロスという馬がいたが、この馬は「逃げ」のスペシャリストであった。自らハナを奪い、後はペースを落としスローダウン。日経賞で見せた直線の33秒台の脚は後続馬につけ入る隙を全く与えず、ナリタブライアンを倒せるのはこの馬しかいないと思わせた程であった。また逃げ馬で忘れてはならないのが、サイレンススズカ。この馬の場合は途中でペースを落とすこと無く、後続馬に影を踏まさず豪快に逃げ切る。怪我で引退しなければどこまで強くなっていただろうか?! 追込み一辺倒であったメジロブライト、ナリタタイシン等は他力本願であり、レースの展開がそのまま成績に結びついていた。 <7>性別 一般に牡馬はスタミナ、勝負根性があり長距離向け、牝馬はスピードがあるがスタミナが無く短距離向けの馬が多い。3200mの天皇賞(春)を征した牝馬はいまだ存在しないことがそれを証明している。逆にノースフライトやイブキパーシブ、キョウエイマーチ等の牝馬は短距離界で牡馬を相手に活躍した。また、性別によって規定の積量も異なる。牝馬は牡馬に比べて2Kg〜4Kgは軽いので有利である。 <8>枠順 枠順も結果に少なからず影響する。逃げ馬の場合は先頭に立ち易い内枠が有利であり、かかり易い馬は馬込みに入れ易い真ん中、または内枠が有利である。追込み馬は道中控える為、基本的に枠順は不問である。また、気性の激しい馬はゲートで待たされるとイレ込むので後入りの偶数枠が良い。また、ナリタトップロードのように跳びの大きい馬は外を走る方が適しており、外枠が良いと言える。 競馬場も枠による有利、不利がある。阪神競馬場のマイル戦はスターとしてすぐコーナーがある為、好位を取れる内枠が絶対有利である。この原則に基づき万馬券を3週連続当てたバイト仲間もいたほどである。 <9>競馬場 競馬場はそれぞれ特徴を持ちあわせており、レースがどこで行われるかも重要な要素の一つである。有馬記念の行われる中山競馬場は馬場が重く、直線の坂がキツイ。よってパワーのある馬や先行馬が得意としている。また、京都競馬場は3コーナーの下りと長い直線がポイントであり、差し馬に有利である。高松宮記念が行われる中京競馬場は左回りの小回りで直線が短く、先行馬が有利である。獲得賞金10億を超すスペシャルウィークは左回りを得意としており、左回りの東京競馬場で行われるダービー、天皇賞(秋)、ジャパンカップを征した。対して、ライバルであったグラスワンダーは右回りを得意としており、中山競馬場で行われる朝日杯3歳S、有馬記念、そして同じく右回りの阪神競馬場で行われる宝塚記念を征した。この2頭の対決は2回あったがいずれも右回りの競馬場で行われた為にグラスワンダーの勝利(宝塚、有馬)で終わっている。左回りでの対決を是非見てみたかった。 <10>輸送 長距離輸送も基本的にイレ込んだり、体重変動の原因となる為に減点である。しかし、中には輸送を苦にしない馬もいる。エルコンドルパサーは日本馬で初の海外長距離GIを征し、世界最高峰のレース・凱旋門賞で2着に入り歴史を作った。海外へ渡る場合、ほとんどの馬が長距離の輸送と環境の変化でイレ込み、力を出せないケースが多い中、この快挙は特筆すべきである。 日本ではあまり活躍できなかったフジヤマケンザンや上位入選の常連・ステイゴールドが海外GIを勝てたのも、輸送に適応力があったことと、環境が変わって気分が一新できたのが大きかったのであろう。 以上が競馬の勝敗を左右する主なファクター10項目である。この他にも夏場の暑い時期に強い馬や、牡馬混合レースになるとサッパリ勝てなくなる牝馬や、GIなどで大きな歓声が上がるとイレ込んでしまう馬などがいる。また、芝かダートかも重要なファクターである。砂の女王・ホクトベガは戦場を芝からダートに移して見事に開花した。 その馬の特徴や性格を熟知することが、馬券を当てる為の必要かつ最低限のことであることを肝に銘じておきたい。 ・・・・・・・・・・・・ このように、お金を賭ける賭けないは別として「競馬の予想」というのも意外に楽しいものである。特に春と秋のGI連戦は毎週のようにGIレースがある為、月曜〜土曜まで予想で楽しむことができる。 では何を題材に予想するのか? 真剣に予想するなら競馬新聞を買うべきであるが、たかが新聞なのに400円もするので、私は内容の充実している競馬雑誌「週刊ギャロップ」(600円)を買っていた。この本は他の専門紙のように、ただ競馬をギャンブルと捉えているだけではなく、その奥にある人間愛やロマンにスポットを当て、競馬を一種のドラマと見立てているところに共感を覚えてしまう。 皆さんも競馬を予想するなら週刊ギャロップをお勧めします。(決して廻し者ではありません) |
>>>ひひーん |